フローリング(床材)の選び方
― 暮らしとともに育つ、無垢材の床を選ぶために ―
無垢フローリングは、見た目の美しさだけでなく、足ざわり、空間の温度感、そして経年変化による風合いなど「日々の暮らしそのもの」を支えてくれる存在です。
しかし、木の種類も仕上げも多岐にわたり、「どれが自分に合っているのか分からない」と悩まれる方も少なくありません。
このページでは、実際に選ぶ際に知っておきたい視点をご紹介します。
木の種類(樹種)で選ぶ
― 性能と表情を左右する、フローリング選びの出発点 ―
無垢フローリング選びでもっとも大きな違いが出るのが「木の種類(樹種)」です。木それぞれが持つ密度、硬さ、色合い、香り、経年変化などは千差万別。まるで人と同じように、木にも「性格」があるのです。
● 主な樹種とその特徴
― 個性が光る、深みのある表情と高い耐久性 ―
アカシアは、はっきりとした木目とコントラストのある色合いが特長の広葉樹。
ナチュラルさと重厚感をあわせ持つ、人気上昇中のフローリング材です。
- 黄褐色からこげ茶色までの濃淡が空間にリズムと立体感を生み出す
- 木目もやや荒々しく、ヴィンテージやアジアンテイスト、インダストリアルな空間に好相性
- 経年変化によって色が濃くなり深みを増す
オーク
― 機能性とデザイン性を兼ね備えた、フローリングの王道 ―
はっきりとした木目と、硬くて丈夫な性質から、古くから家具や床材に使われてきた樹種です。
耐久性・耐水性が高く、使い込むほどに風合いが増すため、長く暮らす家にぴったり。
- 節や「シルバーグレイン(虎斑/銀杢)」と呼ばれる模様が味わいに
- 落ち着きのある黄褐色系で、和洋問わず調和
- 複数の仕上げ・張り方に対応しやすく、施工自由度も高い
カバ(樺)
― 細やかで上品、やさしい色味が魅力 ―
繊細な木目と白~淡桃色のやわらかな色合いが特長の樹種です。
空間にすっきりとした清潔感と、やわらかさを添えてくれます。
- 柔らかく、足ざわりはさらっと軽やか
- 色のばらつきが少なく、シンプルでミニマルな空間に最適
- 経年でほんのり飴色に変わり、やわらかな温かみが増す
西南桜(せいなんざくら)
― 主張しない木肌や木目、淡いピンク色で柔らかな雰囲気 ―
名前に「桜」とつきますが、実際にはカバノキ科の広葉樹です。
住空間と相性がよく、柔らかな光としっとりなじむ色味が魅力。
- 細やかな木肌と、やさしい赤みを帯びた色合い
- 和室・洋室問わずなじみ、自然素材の壁や家具と好相性
- 木の香りもほのかで、くつろぎを感じさせる材
タガヤサン(鉄刀木)
― 深い黒褐色と力強い縞模様、希少で重厚な高級材 ―
「唐木三大銘木」のひとつに数えられる超硬質の高級木材。
深みのあるダークブラウンに、黒く鮮明な縞模様が入り、空間に重厚感と威厳を与えます。
- 非常に硬く、キズ・摩耗に強い
- どっしりとした存在感で、モダン・高級感のある空間に
- 唯一無二の個性を演出
※ラフ加工のフローリングは土足用です。素足で利用する箇所にはご使用をお控えください。
ナラ(楢)
― 木のぬくもりを感じる、普遍のクラシック ―
ナラは、日本の住まいとも古くからなじみのある広葉樹で、丈夫さと美しい木目を兼ね備えた定番材。
落ち着いた黄褐色の色味と、力強くも上品な木目が特徴で、和・洋を問わずさまざまな空間に溶け込みます。
- 独特な木目が、自然の力強さと素材の味わい
- 硬めの木質で、へこみや摩耗に強く、高い耐久性を持つ
- ナチュラル、クラシック、モダンなど、幅広いスタイルに合わせやすい
チーク
― 世界中の家具職人に愛される、気品あるフローリング ―
東南アジア原産の最高級木材のひとつ。
艶のある黄金色と、油分を多く含むしっとりした肌ざわりが魅力です。
- 耐水性が非常に高く、船舶や高級家具にも使用される
- 経年で褐色~赤褐色に変わり、艶と深みが増す
- 裸足で歩くと、しっとりなめらかな感触にうっとり
ブラックウォールナット
― 洗練されたダークブラウンが、空間を格上げ ―
深みのあるチョコレート色に、美しい波状の木目。
北米を代表する高級材で「床材としてのステータス感」も感じられる存在です。
- ダークトーンのインテリアと好相性。重厚で落ち着いた雰囲気に
- 経年で色はやや薄くなるが、シルクのような艶が増す
- 木目が柔らかで、空間に独特のあたたかみをもたらす
ブラックチェリー
― 時を重ねて美しさが育つ、「経年美」の代表格 ―
施工直後は淡いピンクがかった肌色。そこから年を追うごとに赤みが増し、深い飴色に変化していく、まさに「育てる木」です。<
- 肌理が細かく、手触りも滑らか
- 経年変化をもっとも楽しめる材のひとつ
- 高級感とやさしさを併せ持ち、リビングや寝室におすすめ
→ それぞれの樹種の詳細は、[
樹種について] ページでもご紹介しています。
トーン(色合いとグレード)で選ぶ
― 空間全体の印象を決める、大切な要素 ― お部屋の印象を決める ―
色の違いは、空間の明るさや広がり、インテリア全体の雰囲気に大きく影響します。
無垢材の色合いは自然そのもの。だからこそ、「好きな色」ではなく「暮らしに合う色」を考えることが大切です。
明るめのトーン(白~淡褐色)
明るく軽やかな印象で、自然光をよく反射し、空間が広く感じられます。北欧スタイルやナチュラルテイストにぴったり。家族が集まるリビングにおすすめです。
中間色・赤みのあるトーン
ぬくもりがあり、どこか懐かしい落ち着きのある色合い。日本の住宅に昔から使われてきた色で、和の空間との親和性も高いです。経年変化によって深みが増すのも魅力。
濃いめ・ダーク系のトーン
重厚感や高級感を演出したいときにおすすめ。家具や建具の色味を合わせることで、空間に一体感が生まれます。照明や壁色とのバランスがポイントになります。
― 1枚1枚違うフローリングの個性と表情 ―
グレードは、木の表情や雰囲気を表現したものです。
木の持つ表情、雰囲気は様々です。ご自身の好みに合った材を選んで頂くことが大切です。
A
カスリ、節、白太を限りなく取り除き木目や色合わせの良い部分を使用した物。統一感のある空間を作り出すことができるグレードです。
AS / S
カスリ、節、白太の比較的少ない部材を使用しています。様々な色合いを持ち、木の雰囲気を楽しめるグレードです。
N / NN / D+ / D
カスリ、節、白太、色ムラ等、木の自然な状態をそのまま使用しています。
従来は欠点とされていた特徴を、生かすことで、木、本来の表情をより楽しむことのできるグレードです。
サイズで選ぶ
― ひとつの部屋が、広くも狭くも見える理由 ―
フローリング材は、幅や長さでも印象が大きく変わります。
120mm~
120mmなどの幅の広いフローリングは、空間がすっきり、広く見える効果があります。
木目が大きく出るので、天然木らしいダイナミックな風合いを楽しめます。
見た目が大らかなので、天井が高い空間や大きなリビングに合わせると、圧迫感が出にくく、ゆったりとした印象になります。
モダン・カフェ風・リゾートインテリアなど、大胆な空間演出ができます。
90mm
90mmなどの幅の細いフローリングは、木の目地が細かく並ぶため、品のあるリズム感が生まれます。
小さな木の板がリズミカルに並ぶことで、「木を張った」感がより強く感じられます。
昔ながらの日本家屋や、北欧・和モダンとの相性がよいです。
落ち着いた雰囲気にしたい方や、経年変化をじっくり楽しみたい方におすすめです。
また、長さ方向に数枚継ぎ足して「定尺」(1820mmまたは1818mm)にした「ユニ」と1枚ものの「OPC」があります。
OPC
OPCとはワンピース(One Piece)の略で、一枚ものの無垢材です。
OPCは、継ぎ手のあるフローリングに比べ、ピースが細切れにならないため、木目に伸びがあり、床一面に敷いた際、重厚感・高級感を演出する事ができます。
ユニ
ユニ(UNI/Universal)は、長さ方向へ木材を継いだタイプのフローリングです。大小さまざまな大きさのパーツをフィンガージョイントという指を交差させたような接合で縦継ぎし、一定の長さに構成しています。
パーツごとに色や模様が異なりますが、木の良い面で構成しても、比較的安価で手に入り、長さが同じため施工性が向上します。
塗装で選ぶ
― 肌ざわりも、手入れのしやすさも、ここで変わる ―
木の表情を決めるのが「仕上げ」。塗装には性能面と感触面、どちらの影響もあるため、使用シーンや暮らしのスタイルに合わせて選ぶことが重要です。
自然塗装
天然の素材(植物性油脂や天然樹脂など)を主原料としたオイル成分を木に含侵させることで潤いと艶を与える塗装方法です。
木本来の質感や香りをダイレクトに楽しめます。
小さなキズも自分で補修しやすく、使いながら育てていけるのが魅力。
定期的なお手入れ(再塗装)が必要な反面、「メンテナンスする=愛着が増す」ことにも。
※膜を形成しない塗装方法のためは水や油の飛び跳ねから完全に保護するものではありません。キッチンや脱衣所など水周りでの使用には十分な注意が必要です。
UV塗装
表面に塗膜を形成するため、耐水・耐汚性が高く、日常の掃除がラク。
水回りや、汚れやすいスペースにも向いています。
木の呼吸をある程度妨げるため、調湿性・手触りにはやや違いがあります。
無塗装
塗装を施していないフローリングです。
ご自身で塗装したい方、経年変化をダイレクトに楽しみたい方に。DIY派にも人気です。
フローリング(床)を選ぶことは、暮らしをデザインすること
フローリングは、ただの床材ではありません。
毎日の暮らしを支え、空間の雰囲気をつくり、
そして、触れるたびに「木のぬくもり」を感じさせてくれる存在です。
樹種の個性、幅のちがい、仕上げの質感…。
ひとつひとつを比べて選ぶ時間こそが、
これからの住まいを想い描く、かけがえのないプロセスだと私たちは考えています。
あなたの暮らしにぴったりのフローリングと、出会えますように。
さあ、最初の一歩を踏み出しましょう!